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更新日:2024年5月30日
富士医療圏で最初のPSC(Primary Stroke Center; 一次脳卒中センター)として地域を支え続ける。
24時間365日 脳血管内治療学会専門医による高度な治療
「一人でも多く、一秒でも早く救いたい」
「脳の病気は中央病院へ」
当院は平成31年9月に富士・富士宮医療圏で最初に「一次脳卒中センター(Primary Stroke Center: PSC)」として一般社団法人 日本脳卒中学会から認定された施設の一つです。
一次脳卒中センター(PSC)は「24時間365日脳卒中患者を受け入れ、急性期脳卒中診療担当医師が、患者搬入後可及的速やかに診療(rt-PA静注療法を含む)を開始できること」「脳卒中診療に従事する医師が24時間/週7日体制で勤務していること」などの厳しい要件を満たした限られた施設のみが認定されます。当院はPSCとして24時間365日脳卒中診療を続けており、脳卒中の入院患者数・機械的血栓回収療法は年々増加しています。(下記、診療実績を参照)
一般社団法人 日本脳卒中学会 一時脳卒中センター(PSC)一覧(別ウィンドウで開きます)
また、令和5年4月より当院では脳卒中当番体制を開始しました。発症間もない急性期の脳卒中を疑う患者さんに関しては、夜間・週末祝日含めた24時間365日を脳神経外科・脳神経内科の2科が分担して全例に対応する体制をとっています。
まず脳卒中当番医が、救急隊からの収容要請を直接受けて、全例を速やかに受け入れます。患者さんが病院に到着するまでに診療放射線技師、脳血管内治療専属看護師や集中治療室などの関係部門に連絡し、緊急対応の準備を進めます。患者さんが到着したら脳卒中当番医が診察し、速やかにMRIやCT灌流画像(CT perfusion imaging: CTP)などの検査を行います。軽症脳梗塞や特殊な脳梗塞、詰まった血栓を溶かす血栓溶解療法(t-PA静注療法)が必要な場合は脳卒中当番(脳脳神経外科もしくは脳神経内科)が、脳出血やくも膜下出血、詰まった血栓をカテーテルで取り除く機械的血栓回収療法が必要な場合は脳神経外科が担当します。
当院ではt-PA静注療法や機械的血栓回収療法を施行したケースに関して、定期的に救急隊とミーティングを行い、振り返りを行っています。(下記、『1分1秒をあらそう脳卒中診療 ~Time is Brain~』を参照)各ケースでの初期対応が迅速で的確であったかを確認して次のケースに備え、また当院での治療経過を共有することで患者さんがどのように治療を受けて改善しているかを報告しています。このようにして、富士医療圏の脳卒中医療の改善・底上げを目指しています。
また、院内でも定期的に各症例を振り返るミーティングを行っています。治療内容を振り返り、初期対応から治療までの流れに問題はなかったか、治療内容は適切であったかを振り返ります。さらに、脳血管内治療チーム内で治療手技の振り返りを行い、治療戦略の是非や治療機器の選択内容・手技の確認などを行います。また、日々新しいカテーテル治療機器が登場していますが、当院では、ほぼ全ての会社の治療機器を導入し、症例に応じて使い分けています。また、新しい機器に関してはハンズオン(手技トレーニング)を欠かさず行うことで、治療クオリティを向上・維持するよう努めています。日進月歩の最新カテーテル治療を富士医療圏の皆様に提供し続けています。
院内カンファレンス |
脳血管内治療チームの振り返り |
ハンズオン |
実際にこれらの活動を実施したことで、救急隊の当院への搬送時間、当院到着から治療開始までの時間、治療時間は全て短縮しています。こうした活動を維持することで、富士医療圏の脳卒中診療を支えていきたいと考えています。
当院は東京慈恵会医科大学(慈恵医大)と協力病院であり、脳神経外科医も慈恵医大から派遣されています。慈恵医大 脳神経外科は脳動脈瘤などの脳血管障害の治療で知られており、当院で手術を担当する医師は全て慈恵医大でトレーニングを受けています。2021年より常勤として日本脳血管内治療学会 専門医(カテーテル治療の専門医)が赴任し、以降、脳血管障害の治療件数が増えています。(下記、診療実績を参照)また、下記の「患者受け入れから振り返りまで」、「院外活動」に示しているような活動を通して、院内のみならず、富士医療圏の脳卒中含めた脳神経外科診療の向上に寄与しています。
さらに、2023年より脳動脈瘤に対する最新のカテーテル治療デバイスである「Flow Diverter」ステントを導入しています。通常のカテーテル治療では動脈瘤にコイルを複数本詰め、場合によってステントを併用して動脈瘤の塞栓率(どの程度しっかりと動脈瘤にコイルを詰めて栓をしているかを表す指標)を上げて治療を行いますが、それでも時間が経つとコイルに隙間ができて動脈瘤への血流が再開(再開通)し、再治療を要することがあります。
このFlow Diverterステントを用いることで、コイルを用いずとも従来のカテーテル治療よりも再開通するリスクを減らすことができます。Flow Diverterステントは従来のステントよりもステントの金属メッシュの目が細かい特殊な構造のステントであり、動脈瘤の根本の血管に留置するだけで動脈瘤に入る血流量が減少して瘤内部の血液がうっ滞し、徐々に動脈瘤が血栓化することで動脈瘤に栓をし、くも膜下出血のリスクを下げることができます。このFlow Diverterステントは限られた施設でしか認可されておらず、富士医療圏では当院が最初に導入しています。また、当院は複数のFlow Diverterステントで実施施設として認定されていますので、患者さんの動脈瘤や血管の状態に応じて適切なステントを選択して治療することができます。
Flow Diverter ステント |
従来の脳動脈瘤治療用ステント |
Flow Diverter ステント治療のイメージ動画
令和6年2月より東京慈恵会医科大学脳神経外科が株式会社アルムと提携して開発した医療用コミュニケーションツール「Join」を導入しました。これにより、緊急の患者さんが来院した場合も、速やかに脳神経外科チームのみならず関連する脳卒中チーム全体で診療情報・画像などを共有し、速やかにチーム全体で治療方針を検討・決定することができます。
同じく令和6年2月から、血管撮影装置で実際に行われているライブ手術映像や手術室のライブカメラ映像を、Joinの高度なセキュリティを通じて診療チーム全体にライブ配信・共有する「Join Live View」を大学病院でない地域中核病院として全国で初導入しました。たとえ、脳神経外科医師の全員が病院内に揃わなくてもJoin Live Viewを通じて遠隔で手術に参加でき、また東京にある慈恵医大の指導医から手術の指示・アドバイスを受けながら遠隔診療を通じて高度・安全な治療を提供できるようになりました。
さらに、高難度の手術の際には慈恵医大から脳血管内治療部教授や頭蓋底外科医師、脊髄外科医師などを招聘して手術を行っています。富士市にいながら、慈恵医大で受ける手術と同水準の治療を受けることができます。
当院は、富士市唯一の総合病院です。脳以外の疾患をお持ちの場合でも、総合的に全身を診療することができます。特に脳卒中などの脳血管疾患の場合、心臓や末梢血管の病気を合併している可能性があります。また、基礎疾患として高血圧・高脂血症・糖尿病・腎障害などを患っている方も少なくありません。その場合は循環器内科・心臓外科・腎臓内科・糖尿病内科等の複数診療科で診療を行うこととなります。
外来・入院で、その他領域の疾患で治療が必要となった場合でも、速やかに各診療科と連携し、診療にあたることができます。我々は脳だけを診ることなく、全身を、また患者さん個人個人の背景までを考えた全人的な治療を提供します。
『病気を見ずして 病人を診よ』これは東京慈恵会医科大学で建学の精神としてスタッフ全員に刻まれている言葉です。病んでいる「臓器」のみを診るのではなく、病に苦しむ人に向き合い、その人そのものを診ることの大切さを表しています。
診療内容は脳神経外科全般にわたる外科治療ですが、特に脳血管障害、頭部外傷、救急診療がメインです。脳血管内治療の専門医を迎え、脳卒中の急性期治療・予防手術ともに充実した診療を24時間365日提供できる体制となっています。破裂(くも膜下出血)・未破裂脳動脈瘤・動静脈奇形や脳動脈・頚動脈狭窄症に対しては、従来の顕微鏡手術以外にもカテーテルによる血管内治療にも対応しています。
夜間・休日にも医師が待機しており、脳血管障害、頭部外傷、多発外傷など多彩な救急疾患にも対応できる体制をとっています。
文字通り「1分1秒を争う」病気です。
急性期脳卒中、特に脳梗塞の治療では、発症から治療開始までの時間が早ければ早いほど後遺障害が少なくなることがわかっています。そのため、下の図にある各ステップでの時間短縮を目指して院内・院外の活動を行っています。
脳血管内治療(カテーテル治療)について:「切らない手術(別ウィンドウで開きます)」
当院の脳卒中診療の標語は「24時間365日断らない」です。そのために、当院では脳卒中当番を決めて、脳神経外科・脳神経内科で輪番にて脳卒中疑いの患者さんの初期対応・治療にあたっています。どのような方・どのような状況でも遅れ・滞りなく患者さんを受け入れて速やかに診療しています。また、常勤の脳血管内治療(カテーテル治療)専門医が週末などで不在の際も、非常勤の脳血管内治療専門医が当直していますので、「24時間365日」専門医によるカテーテル治療をおこなうことができます。また、頭を開けて顕微鏡や内視鏡を用いて行う治療(開頭手術)行う治療が必要な際も開頭手術に習熟した専門医が「24時間365日」待機しています。シームレスに適切な脳卒中診療を提供できる体制を整えています。
当院では脳卒中を患う患者さんが搬送されてきた際に、脳の血管だけでなく血流評価を行うことができる最新のCT(灌流CT)、3Tの高解像度MRIを使用しています。脳卒中を疑う患者さんが来た場合は最優先で検査を行えるよう、夜間・休日であっても放射線科と連携して診療しています。1分1秒でも早く画像で評価を行い、そのまま血管内治療を行う手術室へと搬送して治療を行います。
・脳梗塞の治療
・脳出血の治療
・くも膜下出血の治療
当院では毎週、脳卒中チーム(医師・看護師)が集まりカンファレンスを行っています。各症例を振り返り、患者さんにとっての最善の治療方針を皆で検討しています。また、それぞれの症例で搬送から治療までの流れを振り返り、次の症例に向けてより良い治療ができるよう日々改善を行っています。
また、救急隊とも同様に振り返りを行っています。病院搬送までの流れの中で、初期診断・対応や病院への収容要請などを振り返ることで各症例の良かった点・改善点を洗い出し、次の症例に備えて改善を続けています。
脳卒中診療の第一ステップは、ご本人およびご家族が脳卒中を疑う症状を認識し、いかに早く119番に電話して救急要請するかにかかっています。そのためには、どのような症状を見たら脳卒中と考えるか知っていなければなりません。
「 顔が曲がる」、「手が上がらなくなる」、「呂律が回らなくなる」といった症状を認めた場合は速やかに受診してください。4.5時間以内であれば脳の血管に詰まった血栓を溶かす点滴を、24時間以内であればカテーテルで血栓を取り除く手術を行える可能性があります。頭を切らずに行える低侵襲な治療ですが、病院に到着するまでの時間が早いほど効果が高く、反対に遅れてしまうと治療の機会を逃してしまうことになります。おかしいと思った場合は様子を見ずにすぐ救急要請をしてください。
市民公開講座:『知っておきたい脳卒中のサインと最新カテーテル治療 ~1秒を争う脳卒中診療の実際~』(近日、公開予定)
2023年6月22日に開催された市民公開講座において、渡邊副部長が講演を行いました。脳卒中を疑う気をつけるべき症状や当院で行っている最新治療まで幅広い講演内容となっています。ご自身とご家族を脳卒中による障害から守るために大事な情報を発信しておりますので、ぜひご覧になってください。
また、富士市立中央病院「病院だより」に脳梗塞の診療に関する記事を掲載しました。このような活動を経て、富士市の市民の皆様に脳卒中に関する知識を深めていただけるよう努めています。第一弾では脳梗塞に関する記事をお送りしましたが、今後他の疾患に関しても順次お伝えしていく予定です。
脳卒中を疑う患者さんが救急要請された際、1秒でも早く当院へ救急搬送してもらうためには救急隊との緊密な連携が必要です。当院では、富士市・富士宮市の救急隊(消防署員)を対象に毎週症例検討会を行っています。その週に当院へ運ばれた脳卒中の患者さんたちが通報から搬送、受け入れ、その後の検査・治療がどのようになされ、患者さんがどのような回復をしたかをお互いに報告します。各症例でどこが良かったか、どこが改善点かを救急隊と話し合い共有することで次の救急搬送のスピード・質を向上するよう努めています。
また、企業と協力して定期的に脳梗塞救急医療セミナー開催しています。脳卒中に対して行っているカテーテル治療を、人工血管モデルを使用してライブ中継することで、救急隊や近隣病院・クリニックの方々にもどのような治療が行われているか実感してもらっています。これに合わせて当院・救急隊双方でどのように脳卒中治療にむけて努力・改善しているかをお互いに共有し、富士市・富士宮市の救急医療レベルの改善に努め、また救急隊・近隣病院・クリニックとの連携を深めています。
動画に登場する患者および表示される氏名は、模擬患者であり、実際の患者さんではありません。
当院脳神経外科の医師は東京慈恵会医科大学から派遣されており、東京慈恵会医科大学および全国に派遣されている慈恵医大関連病院の先生方と、毎月オンラインでカテーテル治療の症例検討会を行っています。多くのカテーテル治療専門医と意見を交換し、メンバー全員の知識と技術をブラッシュアップできるように心がけています。
カテーテル治療は日進月歩の世界です。新しい器械が次々と開発されているので、日々知識と技術を磨いていく必要があります。脳神経外科では各メーカーと提携し、最新のカテーテル治療器械を導入しています。その際には、ハンズオン(実際に器械を使用したトレーニング)を定期的に実施しています。若手医師からベテラン医師まで、使用する器械に全員が習熟するようにしています。
当院では、毎年8月にジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社との共催で中学生を対象としたブラックジャックセミナーを開催しています。カテーテル治療、救命処置、外科基本手技や模擬手術など様々な医療を模擬体験することができ、参加者には大変好評です。令和5年度は、8月19日に3年ぶりに開催しました。
副院長兼部長:野田 靖人(のだ やすと)
(専門分野)
脳神経外科一般
脳血管障害
(資格)
日本脳神経外科学会専門医
(所属学会)
日本脳神経外科学会
副部長:渡邊 充祥(わたなべ みつよし)
(専門分野)
脳神経外科一般
脳血管障害一般
脳血管内治療
もやもや病の治療
脳卒中に対する幹細胞治療研究
(資格)
日本脳神経外科学会専門医
日本脳血管内治療学会専門医
日本脳卒中学会専門医
日本再生医療学会再生医療認定医
(所属学会)
日本脳神経外科学会
日本脳神経血管内治療学会
日本脳卒中学会
日本脳卒中の外科学会
日本再生医療学会
医員:大川 駿(おおかわ しゅん)
(専門分野)
脳神経外科一般
脳血管障害一般
脳血管内治療
脊椎外科
(所属学会)
日本脳神経外科学会
日本脳神経外科コングレス
日本脳神経血管内治療学会
日本脊髄外科学会
医員:加藤 千智(かとう ちさと)
(専門分野)
脳神経外科一般
(所属学会)
日本脳神経外科学会
日本脳神経血管内治療学会
日本脊髄外科学会
医員:本橋 孝太(もとはし こうた)
(専門分野)
脳神経外科一般
(所属学会)
日本脳神経外科学会
種類 |
令和元年度 |
令和2年度 |
令和3年度 |
令和4年度 |
---|---|---|---|---|
手術総数 |
141件 |
118件 |
172件 |
228件 |
血管内治療 |
33件 |
32件 |
70件 |
78件 |
脳梗塞 |
4件 |
10件 |
24件 |
36件 |
未破裂脳動脈瘤 コイル塞栓術 |
13件 |
8件 |
5件 |
12件 |
未破裂脳動脈瘤 クリッピング術 |
0件 |
1件 |
3件 |
3件 |
くも膜下出血 コイル塞栓術 |
9件 |
10件 |
11件 |
10件 |
くも膜下出血 クリッピング術 |
5件 |
7件 |
3件 |
4件 |
頸動脈ステント術 |
6件 |
6件 |
6件 |
15件 |
頸動脈内膜剥離術 |
0件 |
0件 |
5件 |
10件 |
浅側頭動脈ー中大脳動脈吻合術 |
0件 |
0件 |
0件 |
2件 |
脳腫瘍手術(生検術含む) |
3件 |
2件 |
6件 |
6件 |
慢性硬膜下血腫 |
62件 |
34件 |
32件 |
48件 |
シャント手術 |
8件 |
8件 |
12件 |
6件 |
|
令和元年度 |
令和2年度 |
令和3年度 |
令和4年度 |
---|---|---|---|---|
t-PA静注 |
4件 |
9件 |
8件 |
14件 |
血管撮影検査(17室、21室のみ) |
31件 |
33件 |
70件 |
82件 |
|
平成30年度 |
令和元年度 |
令和2年度 |
令和3年度 | 令和4年度 |
---|---|---|---|---|---|
延入院患者数 |
7,356人 |
6,232人 |
4,766人 |
6,071人 |
6,762人 |
外来患者数 |
5,568人 |
5,742人 |
5,004人 |
5,662人 |
5,435人 |
手術件数 |
194件 |
176件 |
129件 |
189件 |
195件 |
脳卒中入院 |
0人 |
35人 |
47人 |
83人 |
190人 |
血栓回収術 |
0人 |
2人 |
10件 |
23人 |
31人 |
救急患者数 |
572人 |
546人 |
434人 |
579人 |
622人 |